非認知的能力

これからの幼児教育において重視される能力として非認知的能力があります。非認知的能力とは,OECDが唱える社会情動的スキルのことです。社会情動的スキルという言葉を聞いてダニエル・ゴールマンの「EQ~こころの知能指数」(講談社,1996)を思い出された方もおられるでしょう。

ゴールマン自身は,EQではなく,Emotional Intelligence (情動知性)という用語を使っていますが,メディアがIQと対比するためにEQという用語を使い始め,アメリカ社会にEQという言葉が一気に広がりました。

EQは,IQに代表される認知的能力以上に,人生の成功に大きな影響を与えると考えられています。EQの要素としてゴールマンは次の内容を挙げています。

  • 自分本当の気持ちを自覚し尊重して,心から納得できる決断を下す能力
  • 衝動を自制し,不安や怒りのようなストレスのもとになる感情を制御する能力
  • 目標の追求に挫折したときでも楽観を捨てず,自分自身を励ます能力
  • 他人の気持ちを感じとる共感能力
  • 集団の中で調和を保ち,協力しあう社会的能力

あれ,これってライフスキルのことじゃないの,と思われた方。その通りです!実際,ゴールマンは,前述の著書の中でEQを高めるための具体例としてライフスキル教育の実践例を紹介しています。

EQがIQ以上に重要視される理由として,その影響力の大きさ以外に,EQがIQに比べて経験や学習によって獲得できる部分がはるかに大きいということが挙げられます。EQが大きく成長する時期が幼児期から思春期にかけた時期です。特に幼児期は,家庭や公的教育機関において遊びや集団活動を通してEQを育てることが重要です。私が教育委員を務める伊丹市では,国に先駆けて幼児教育の無償化を推進しようとしています。それは,幼児教育の重要性を認識し,家庭の経済状況にかかわらず希望する家庭の子ども全員が,幼稚園,保育所,認定こども園などの教育機関で学ぶ機会を保証すべきだと考えるからです。

中国・四国支部長の池田先生を中心に小学校低学年用のライフスキル教育プログラムの開発研究が進められています。小学校段階になると,教育課程の中に位置付けて系統的にEQ,すなわち非認知的能力を育てることができます。池田先生,藤本先生,小学校低学年版の完成を心待ちにしております。

 

JKYBミニニュースレター(2017年6月号)

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