日本の学校いじめ対策の転換を望む〜未然防止の重要性〜

文部科学省の発表によると,2019年度のいじめの認知件数は61万件あまりで,過去最多となりました。文部科学省は,この結果について「積極的に(いじめを)把握しようとする動きが広がったため」としています。しかし,いじめに対する教員の意識に左右される認知件数よりも客観的指標である「重大事態」が増えていることからして,日本の学校におけるいじめの現状は決して楽観視できないと考えるべきです。

我が国におけるいじめ問題が一向に改善されないのは,相変わらず早期発見・早期対応に重点を置く国の対策の根本的誤りにあると私は考えています。なぜ,いじめが少ない北欧諸国のように,いじめが起こりにくい受容的な学校環境づくりや,いじめをしない,受けない,見逃さない子どもの能力や特性の育成を目指す未然防止にもっと真剣に取り組まないのでしょうか。

私が代表を務めるJKYBライフスキル教育研究会は,科学研究費の補助を受けて,今年度から4年間にわたって「いじめ目撃者の行動変容に焦点を当てた学校いじめ防止プログラムの開発と有効性の評価」に取り組んでいます。研究の一環として,年末の12月26日に京都府綾部市の「あやべ・日東精工アリーナ」を会場として,いじめ防止に関するセミナーを開催します。綾部市は来年度以降の研究拠点候補の一つとして予定しています。

新型コロナウィルス感染問題がなかなか収束しない中,思った通りには研究は進みません。しかし,こうしたセミナーを地道に積み重ねて,いじめの未然防止に対する関心を高め,来年度以降の評価研究につなげて行きたいと考えています。   

以前にもご紹介したことのあるアール・ナイチンゲールは『人間は自分が考えているような人間になる』(きこ書房,2014)の中で,「願望・目標のない人間は海の上の漂流者と同じである。願望や目標こそ,人間に生きる勇気を与え,苦しい道のりを耐えていけるだけの力を与えてくれるものなのである」と述べています。私は,人生の目標とは目標のある人生を生きることである,と考えています。どんなに困難な状況であっても,自分の人生の目標を見失うことなく最善を尽くしたい,また自分だけのためではなく,他者と共有できる目標をもてば,さらに勇気が湧き上がって来ます!

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