自己有用感とセルフエスティーム(健全な自尊心)との関係

 聞くところによると,自己有用感は自尊心よりも優れているという主張をする人たちがいるということです。もし私が,実際にそうした主張をする人に会ったら,「愚か者!」と言ってやりたいと思っています。

 私が今よりもずっと自分自身のセルフエスティームが低かった頃は,自分が他の人や社会にとって役にたつことができるなどとは夢にも思いませんでした。しかし,セルフエスティームについて学び,その重要性に気づき,自分自身のセルフエスティームを高める生き方を実践し,自分自身のセルフエスティームが高まっていることを感じられるようになるにつれて,自分はこのセルフエスティームという考え方を広めることによって,学校教育や社会に対して自分なりの貢献ができる,という確信を次第に強めて行きました。そして,私はこの世界の中で自分がなしうることをやっと見つけたという幸福感を抱きました。

 セルフエスティームが高まれば,自ずと周囲の人や社会に対して自分なりのやり方で貢献することができるようになるのです。では,セルフエスティームをもたずに,自己有用感をもつことはできるのでしょうか。私はもつことはできると思います。ただし,そのような人は,周囲の人からほめてもらうために人や社会に貢献しようとします。ですから,誰も見ていないところではそうした行動はとりません。一方,セルフエスティームの高い人は,内発的動機から人や社会に貢献したいと思うので,人が見ているかどうかはまったく関係がありません。いつでも,同じように利他的行動をとるのです。

 ナサニエル・ブランデンの有名な言葉に「自己尊重は他者尊重の土台となる」という言葉があります。セルフエスティームが育っていないのに自己有用感の形成を目指すなどとはあり得ない話です。セルフエスティームを育て,高めること。このことが本当の自己有用感の形成につながっていくと私は信じています。もし皆様が「自己有用感は自尊心よりも優れている」と主張する人に会ったら,ナサニエル・ブランデンの本を読んで,セルフエスティーム(健全な自尊心)を育てることこそが教育の本質であることを伝えてください。

JKYBニュースレター(2016年3月号)

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