子どもの自尊心を育む

 私は,二十年以上にわたって,喫煙,飲酒,薬物乱用,性行動,いじめなど,思春期の様々な危険行動の防止に取り組み,こうした危険行動をとる子どもたちは共通して低い自尊心の問題を抱えていることに気付きました。彼らは,自分が人から愛される価値があると思っていませんし,人生上の様々な問題を自分で解決するために必要な「考える力」に対する自信に欠けています。

 自尊心はまた学力とも関係があるようです。平成25年度全国学力・学習状況調査の結果によりますと,学力調査の得点が高い学校ほど「自分には,よいところがある」と思っている子どもの割合が高いことが示されました。自尊心の高い子どもは,「新しい考え方,新しい体験,人生の新しい可能性について心を開き,好奇心をもつ」,あるいは「自分の心を信頼し,人生を運命だとか敗北だとか思わないので,どのような状況や挑戦に出会っても,独創性ばかりか,遊び心すらもって,柔軟に対応する」といった特性をもっています(ナサニエル・ブランデン「自信は人生のカギ」春秋社)。前向きで主体的な生き方をする子どもは,学習面に限らず,様々な領域で自分の可能性を最大限に発揮する可能性が高いでしょう。

 私は,私たち大人が子どもの中に育てるべき最良のものは,「健全な自尊心」であると信じます。子どもの自尊心を高めるために,私たち大人は何ができるでしょうか。まずは,子どもの話にじっと耳を傾けましょう。子どもは,自分の考えや気持ちをしっかりと受け止めてもらうことによって,人として尊重されていると感じることができます。また,発達段階に応じた選択の機会を与えましょう。例えば,1,2歳の子どもにおもちゃを買ってあげる際に,大人が勝手に選んで与えることもできますし,幾つかのおもちゃを示しながら子ども自身に選ばせることもできます。どちらが「考える力」を高めるやり方でしょうか。そして何よりも,私たち自身が高い自尊心をもち,子どもにとって良い手本となることが重要です。子どもの自尊心を育むことを大切にする保護者や先生がさらに増えますように。

「教育いたみ」(2014年3月)

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